皇帝の守護者「影の剣」の息子として生まれたアインは、幼少の頃から鍛練を積み、剣たる母への憧れを抱いていた。兄弟同然に育った親友の皇子アドルフの側で彼を守りたい。だが、その願いが理解されることはなかった。不満を抱えながらも平穏だった日常、それはある夜を境に一変する。新皇太子暗殺――血塗られた宿命が、彼らを飲み込もうとしていた。
連邦評議員ロディス・カスタニエの元に届いた一通のメール。それは、婚約者、皇女マーゴットからの、出発を告げる手紙だった。久々の再会の予定、だが、最近の彼は忙しい。新たなプロジェクトを立ち上げたものの、なかなか芳しい成果が上がらないのだ。空港まで迎えに行くと返信したものの、途端に飛び込んでくるトラブル報告。今日も、永い一日が待ち受けているのだった――
婚約と連邦評議員就任が決まり、アヴァロン城を離れることになった皇女マーゴット。彼女の「影の剣」であり弟であるジェラルドも共に海を渡ることが決まっている。しかし、ジェラルドには心配事があった。師のエリンが今回は同行しないというのだ。不安が募る中、旅立ちの時が近づく――
愛玩用に生み出された人工生物「ハーピー」の少年ルートは、空中庭園で「フロア持ち」の主人に飼われて暮らしていた。しかし主人は嗜虐趣味で名高い「エウロの吸血鬼」――ルートは主人が嫌いだった。飼い主は選べない。嫌い、なのに、見放されたくない。揺れ動くルートの心の行方は——。
愛玩用に生み出された人工生物「ハーピー」のエミル。空中庭園で最愛の主人に飼われる日々は喜びに溢れていたが、ひとつだけ不満があった。それは、主人が名前をなかなか教えてくれないこと。ある日エミルは、それを知らないのが自分だけだという事実を突きつけられる――
「幸福の天秤」の続編となる短編。
初めてひとりでΩ‐NETに潜ったユノは、小動物のような奇妙なプログラムに遭遇する。閲覧中のデータと共にかき消えたそれは、軍のハッカー部隊が対応に追われている新種のネットワークウイルスだった――。
孤児であるが故に周囲の大人に頼り切ってしまっている自覚と、将来への不安を抱えながらも、やがて未来を繋ぐ少女の断片。
かつて皇帝アーシュラの剣であったエリン・グレイ。夭折した主君の忘れ形見、皇女マーゴットが彼に託されてから数年が経っていた。
素直に成長するマーゴット、その弟で、彼女の剣となるべく生まれたジェラルドを、岬の屋敷で守り育てる日々。しかしエリンは、後悔の念にひとり苦しめられていた。
モスクワ近郊にある全寮制男子寄宿舎学校、ペトルシキム・ギムナジア。良家の子弟が集まるこのノーブルな一流校では、大してノーブルでもない日常が繰り広げられていた。
ハイスクール課程卒業を控えたユリウスと友人たちを中心に送る日常系四コマ。
モスクワ近郊にある全寮制男子寄宿舎学校、ペトルシキム・ギムナジア。良家の子弟が集まるこのノーブルな一流校に、空軍大佐の息子イブキ・カーリンが転入してきた。小説家志望の温和な彼がそこで目にしたのは、やっぱり大してノーブルでもない日常風景だった。
新生活への期待に胸を膨らませる転入生イブキの視点から送る日常系四コマ。
「ロディが僕のクラスに編入!?」
飛び級のことを何も相談されなかったことで、ユリウスは親友のロディスと気まずい関係になってしまった。そんな中、卒業発表会の出し物である演劇の打ち合わせが始まる。演目は『ロミオとジュリエット』(註:男子校)。
プロデューサーディレクターとして辣腕のようなものを振るうユリウスだったが、発表会直前になって思わぬトラブルが発生する。
空中庭園での愛玩用に生み出された人工生物、ハーピー。美しい羽根を持つよう作られた彼らだが、その羽根は雌にしか与えられず、故に客への人気も雌の方が圧倒的に高い。羽根を持たない雄のハーピーとして生まれたエミルは、そんな自分のことを不運だと思っていた。
幸福とは、幸運の別名──「飼い主」がなかなか決まらず、沈んだ気分で暮らす彼の元に、ある日、不思議な男が客として現れる。
大きな戦争が終わり、僕らの世界は新しい神様を迎えることになった。
チェスター博士と彼が作ったAI達との友情のようなものを描いた、ほのぼの短編読み切りです。